米糊の作り方
1/うるち米糊
ご飯を炊く際と同様に米を炊く。温かいうちに、木べらで水嚢を通して裏ごしする。硬すぎる場合には、水を少量加える。粒が完全に無くなるまで作業を繰り返す。
作業を簡略化するために、米の代わりに「上新粉」という米の粉を使うこともできる。粉をその倍量の水に入れ、一晩漬けておく。鍋に入れ、強火、それから中火で、絶えずかき混ぜながら炊く。パチッという音が聞こえたら、火を止める。
2/ 発酵したもち米糊
ある一定のコンディションを保つことで、米糊は自然発酵させることができる。実験の際には、成功と失敗を同じ回数繰り返し、その原因を完全に解明することはできなかったが、気温が決定的な役目を果たすことは確かなようである。寒すぎると糊が固まって乾いてしまう。冷蔵庫に入れると、この現象が起こることが多い。逆に、暖かすぎると糊が腐ってしまう。したがって、真冬に糊を炊いておき、暖房の効いていない部屋に寝かせておくの推奨する。同じ理由で、昔の摺箔の職人は、糊を床の下に寝かせて置いていたという。
餅米粉から糊を作る。粉をその倍量の水に入れ、一晩漬けておく。鍋に入れ、強火、それから中火で、絶えずかき混ぜながら炊く。パチッという音が聞こえたら、火を止める。
出来上がった糊をタッパーに入れ、水を糊の数ミリ上まで加えて、タッパーを閉める。タッパーを気温の低い戸棚や倉庫、冷蔵庫の野菜室など、8~15度の場所にしまっておく。数日後、糊が柔らかくなったら、数回水嚢を通して裏ごしする。必要であれば、水を少し入れる。その後、再度気温の低い場所に戻す。この工程は最低3週間がかかる。発酵が上手くいくと、糊は柔らかくふわふわになり、酒の匂いがする。赤い、あるいは白いカビが表面に現れる場合があるが、この場合には、カビを取り除く。緑色のカビができたら、糊が腐ってきた証拠で、処分しなければならない。発酵に成功した糊は、涼しい場所で保管し、何カ月間も使うことができる。
膠の作り方
膠は長く保存することが出来ない為、使う直前に準備する。
日本画専用の画材屋で、無添加の膠を購入する。印刷作業に適した濃度は、膠の種類や作業部屋の室温によって異なる。室温が低ければ低いいほど、膠は低い濃度でもゼリー状になる。ある程度の柔軟性を保つため、6~7%程度の濃度を守ることが望ましい。さらに、画材屋で販売されている膠は、同じ濃度でも種類によって接着力や柔軟性が異る為、新しい膠を初めて使う際には、前もって決まった濃度と室温で、テスト印刷したほうが安全である。
膠の粒とつぶしたニンニクを水に入れておく。ニンニクの量は、厳密に計ったわけではないが、水+膠の重さの10%を入れる。
膠が柔らかくなるまで、何時間かふやかしておく。30度以下の温度で湯煎する。ニンニクをナイロンの靴下やモスリンで濾し、粒から汁を絞り出す。
充填剤の作り方
充填剤は印金の全面を印刷するのに必要な量をあらかじめ準備しておく。
計量に際して、普段は0.1グラム単位で計量できるスケールを使うが、まとまった量を計量する場合は、1グラム単位で計量できるスケールで十分である。しかし、顔料は非常に少量を要するため量りにくく、色を見て量を調整する。数日を要する作品製作の場合、新鮮で強い糊を使う為に、途中で新しく糊を作り足す場合があるが、別々に作った糊の色が異ならないよう、充填剤はあらかじめ作品の全面を印刷するために必要量を作っておく。
すり鉢に、カオリン・砥の粉・顔料を入れ、玉を無くすように挽く。2~3%の薄い膠を、充填剤を湿らせて玉が作れる程度、少々入れる。素材を一緒に挽き、玉が均一になるまで長く揉む。玉を乾かす。カビる恐れがあるため、24~48時間ほどして完全に乾くまで、密封した器に入れてはいけない。
素材合わせ
作り方に定められている通りに、素材をそれぞれ量り入れる。
すり鉢に充填剤を入れ、割る。膠を湯煎で少し温めて溶かし、まず少量を充填剤に入れる。均一な生地になるようによく混ぜ、残っている膠を入れ込む。油を足して、ヘラで乳化させるようにしっかり混ぜる。接着剤がゼリー状になるようにする。固まってきたら、米糊を、玉を無くすようにモスリンで濾して入れる。糊が完全に均一になるまでかき混ぜ、冷やしておく。
防腐剤
膠を何日間使えるようにするために、生姜エキスを少々入れる。こうすることで、糊が腐らず数日間使うことができるが、接着力が劣化するかどうかは調べていない。
糊の固さの調整
糊は、印刷した後模様が崩れない程度に、強度を保たせなければならない。しかも、硬すぎると型紙の細部にたまり、印刷した層が不均一になる。糊の硬さは膠の温度に大いに影響される。したがって、印刷する前に糊を冷やした場合でも、布に置いた後の崩れを防ぐため、20度以下の室温のもとで作業する。
糊を冷やすのに、冷蔵庫に入れたり、氷や保冷剤を置いたりすることもできるが、このようにすると、硬すぎになってしまう可能性もある。この場合、ヘラで混ぜることで少し温め、柔らかくする。
実際に印刷する前に、テスト模様を印刷する。