定義

印金という言葉を定義づけることは難しいが、簡単に言うと、型紙を使って生地に接着剤を置き、その上に金をはる、という技法である。

その技術は中国から伝来したといわれており、日本では印金と呼ばれ、中国よりも格別に評価されてきた。先験的にいうと、印金という表現は、織物に金を押すことを示す言葉である。インドから日本にかけてのアジア諸国では、織物に金を押す技術が様々に発展した。用いられる素材はほぼ同様であったが、その各々の技術や制作工程は異なり、その結果、仕上がった印金の印象は異なる。

日本で印金という言葉は、産地や使用およびその制作工程にもかかわらず織物の表面に金を置いた全ての技法を示すことが多い。しかしながら、茶の湯と表具の世界では、印金というものが、時代と産地を特定しさす物である。本研究では、茶の湯と表具の世界における印金について論じる。

平凡社大百科事典によると、印金は「布帛に型を用いてにかわ,漆,のりなどの接着剤を置き,その上に金箔を施すか,もしくはにかわなどを混ぜた金泥を直接型で押すかして文様を表したものをいう。」又は、「日本には中世末から近世にかけて輸入された中国元・明代のものが多少残っており」、「またこれを模倣して作られた日本製のものに〈奈良印金〉〈京印金〉があるが,あまり上質のものではない。一方室町・桃山時代のころから小袖の加飾技法として盛んに用いられた〈粁箔(すりはく)〉は外来の印金に触発されて発達したともいわれるように,技術的には印金と同種のもので,ししゅうや絞(しぼり)と並用したり,単独に用いてみごとな小袖模様を形成してきた。」

 

この定義では、印金について広く述べており、詳細な製作技法については述べられていない。記載されている接着剤が不明確で、金箔も金泥も言い及ぶ。

平凡社大百科事典の定義は、印金を名物裂の一種として珍重する茶道関係の多くの書物が定める定義と共通している。

しかし、工芸の世界では、印金という用語が、衣服の分野に固有の摺箔をさすのに長年使われた。荒木氏によると、17世紀の資料では、摺箔の技術をさす用語として印金が使われた(荒木、染織と生活)。昭和55年頃化学糊を用いた箔の印刷技術が開発され伝統的な技術にかわり台頭し、金彩と呼ぶようになった。しかしながら彼ら摺箔職人は新しい技術であり金彩を行いながら、印金工業組合に所属していた。今日も染織工業の世界では、印金という用語は、摺箔や金彩の代わりに、もしくは同時に、また化学糊を用いた箔の印刷技術においても使われている。

しかし、専門家にとっては、印金や摺箔および金彩の用語ははっきり区別し、使用される。印金の中でも、中国製の本印金と、模倣として見なされている日本製の印金の間にも区別があるようだ。

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