もう使われなくなった技術を用いるとき、必ずしも古典柄を模倣しないといけないというわけではない。シルクスクリーン印刷や合成樹脂フィルムを用いるホットスタンプのような現代の金の印刷技法に比べると、昔の技法は作品に独特な風格を与える。本格的な箔押し、ひび割れ、手書きによる斑、素材の生分解性などのような特徴を、現代デザインの作品に再投入することができないだろうか?
今回、古い作品の表装のためにふさわしい印金の雰囲気を尊重しながら、初めて自分で模様の創作を試みた。構図は、古典的な印金に見られる花市松模様である。広い平面に金を印刷するのを避け、派手な光沢を出さないために、自己相似的な細かいシダ模様を描いた。
葉の模様は非常に細かいので、木工とプラスチック素材専門の文化財修復師フランソワ・デュボアセに依頼し、型紙をレーザーカットで彫ってもらった。金箔が印刷される生地は、天然染料で染めた地味な水色と錆利休色のシャンタンと羽二重である。