印金の模様

印金に見受けられる模様は、バリエーションが多いが、大半は非常に似ている。二種類の模様が主なものである。ひとつは、唐草牡丹模様であり、もうひとつは作り土模様である。それら以外でも、唐風にせよ日本風にせよ、様々な柄も見受けられる。例として、桐の花紋、宝尽くし紋、宝珠や卍及び仏教に関連する模様、雲紋、蝶紋、鳥紋、散らばっている抽象の小紋柄などが挙げられる。印金の多様な印刷技法の差があると同様に、柄の出来にも多少違いがでる。

 

聴松院の袈裟の文様。詳細は山川氏の『袈裟』参照。

以上に述べた模様は、印金に限らず、同期の金襴にも緞子にも見受けられる。唐草牡丹模様は、南宋時代の衣服の代表的な模様であり、日本では格別に好まれ、表装裂においては、現代までずっと使われ続けてきた。同じ唐草牡丹模様であっても、様式は時代により変化してきた。南宋時代の唐草模様はシンプルで曲がり下った線に特徴づけられ、明代では複雑で豊富であるが、実際バリエーションが、作品と同じ数ほどある。唐草模様は大体、牡丹及び、カーネーション、百合の花、4種類の花で表されている。地は、無地だったり、密な、さやがた紋、もしくは菱紋が施されている。またこのような地模様には、丸龍紋が散らばっていることもある。

作り土模様にも、様々な柄が見られるが、満開の牡丹、あるいは菊の花は一般的である。柄の出来が繊細で、花の自然な動きが感じられるのは羅地印金の特徴でありながら、時代の下がった絽地と平織地の印金に見られる模様は、出来がよりシンプルだったり、その形が崩れたり、もしくは粗雑だったりしている。そのため、模様の質に基づき、印金が通常に生産されていた時代にその専門の職人によってつくられた作品と、表具師を含め様々な職人が、印金については半分素人であり、外来の印金を真似し、探りながら、製作した作品と区別することができる。

 

明様式の卍つなぎ牡丹片草模様。『あやめのはな』掲載の印金から復元。

 

宇田氏の『名物裂』掲載の無地牡丹唐草模様。

 

この模様は、複数の印金に見られます。詳細は西村氏の『茶の湯』参照。

 

牡丹作り土模様。詳細は西村氏の『茶の湯』参照。

 

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