模様が少し盛り上がり、多少光沢のある印金を製作するために試みた接着剤の作り方をいくつか紹介する。
40番 薄め、艶やか | |
10%濃度の牛膠 | 71% |
35%ぐらいの濃度の寒梅粉 | 21% |
胡粉 | 8 % |
朱 | 少々 |
190番 薄め、やや艶やか | |
7%濃度の牛膠 | 90% |
カオリン | 5% |
砥の粉 | 2 % |
桐油 | 3% |
朱 | 少々 |
ニンニク | 膠の中に、膠の重さの10% |
191番 やや厚く、光沢が沈んでいる | |
7%濃度の牛膠 | 68% |
発酵した餅米糊 | 20% |
カオリン | 6% |
砥の粉 | 4% |
桐油 | 2% |
朱 | 少々 |
ニンニク | 膠の中に、膠の重さの10% |
179番 やや厚く、無光沢 | |
7%濃度の牛膠 | 59% |
発酵した餅米糊 | 29% |
カオリン | 6% |
砥の粉 | 4% |
桐油 | 2% |
朱 | 少々 |
ニンニク | 膠の中に、膠の重さの10% |
79番 厚く、無光沢 | |
10%濃度の牛膠 | 49,8% |
発酵した餅米糊 | 49,8% |
桐油 | 0,25% |
朱 | 少々 |
半田九清堂という文化財保存修理会社の社長、半田昌規氏は、過去に掛物の風袋を復元するため、印金製作の研究を行われた。この研究は、今も途中である。この研究の際に発見された文献には、おそらく日本の工房で使われていた昔ながらの糊の製作工程が記されていた。この半田氏に教わった方法で、製作を試みてみた。
この糊の出来は、米の発酵状態によるところが大きい。模様が分厚く、輪郭がはっきりして、金の光沢がかなり沈むという効果を生むことが分かった。
192番 厚く、光沢が沈んでいる | |
うるち米糊 | 50 グラム |
6,25%の濃度の牛膠 | 24 グラム |
水+生姜汁 | 小さじ2 |
朱 | 少々 |
– ご飯を炊く時と同様にうるち米を炊き、木べらで水嚢を通して、粒を完全に無くすように裏ごしす。
– この作業において、米のペーストを柔らかくするために、水を加える必要があるが、この水に生姜汁を加える。生姜は防腐剤として使われ、膠の腐敗を遅らす。
– 無添加の牛膠を6%程度に溶解する。
– すり鉢を使って朱を膠の中で挽く。米のペーストに加え、かき混ぜる。
– 密封した器に入れ、倉庫や暖房の効いていない涼しい部屋で7日間発酵させる。
– 糊は空気を含んで膨らみ、柔らかくなってくる。7日間以上経つと、生姜を入れても膠が腐り、糊が液状になってしまう。したがって、糊が柔らかくなり、かつ腐る前に作業しなければならない。
次に、上記の作り方よりも柔らかい糊を作る二つの方法をあげる。この二つの方法にはウサギ膠が用いられるため、歴史的復元の作業からは離れる。日本では伝統的にウサギ膠は用いられていなかったようである(中国でも同様だろうか?)。牛膠に比べて、ウサギ膠は凝固力が高く、柔軟性に優れている。そのため、同じ室温で同じ硬さの膠を作る場合、牛膠よりもウサギ膠のほうが1%低い濃度で作ることができる。
224番 やや厚く、無光沢 | |
4%濃度のウサギ膠 | 59% |
発酵したうるち米糊 | 29% |
カオリン | 7% |
砥の粉 | 3% |
桐油 | 2% |
朱 | 少々 |
ニンニク | 膠の中に、膠の重さの10% |
225番 薄め、無光沢、生地の接着力がもっと強い | |
4%濃度のウサギ膠 | 62% |
発酵したうるち米糊 | 29% |
カオリン | 5% |
砥の粉 | 2% |
桐油 | 2% |
朱 | 少々 |
ニンニク | 膠の中に、膠の重さの10% |